マンション管理会社との個人裁判の記録 saiban3

マンション管理会社との個人裁判の記録や、裁判手続きに関すること。

判例研究 雑誌発行社及び広告代理店の過失による不法行為責任

自分の裁判に参考になりそうな判例を探して見つけたもの。

www.courts.go.jp

  • 事件番号  平成20(ワ)5965
  • 事件名     損害賠償請求事件
  • 裁判年月日 平成22年5月12日
  • 裁判所名・部 大阪地方裁判所  第23民事部

パチンコの打ち子募集及び攻略法に関する雑誌広告を見て広告主に連絡を取り,詐欺被害に遭った原告に対して,雑誌発行社及び広告代理店が過失による不法行為責任を負うと判断された事例

攻略法の雑誌広告が違法だとして、その責任は広告を出した人にあるのですが、それだけでなく広告を載せた雑誌や広告代理店にも責任があると判断されてます。

裁判3の前回期日では、脅迫状を配達した郵便局員が罪に問われないといった話がでてきました。これは本件での管理会社のやったことも、郵便配達と同様で、やはり責任は無いのではといった観点から出されたものだと思います。
郵便配達の場合は手紙の中身を見ることはないのですが、本件で配布された書面は管理会社が印刷して自社の封筒に入れて配布したのだから、関与の度合いに応じた責任があるのではというのがこちら側の主張です。
こちら側の主張を補強する判例が何かないかとさがしていて、検索して見つけたのが今回の判例です。

裁判の争点は以下の通り。

2 争点
(1) 原告は,Dらから金銭を詐取されたか(詐欺被害の有無)
(2) 被告Bが本件各広告を提供し,被告Aが本件雑誌に掲載したことにつき,過失があるか(被告らの過失の有無)
(3) 被告らの過失と原告の損害との間に因果関係はあるか(因果関係の有無)
(4) 過失相殺の有無及び割合

被告の過失の有無についてが、裁判3での管理会社の過失の証明に使えないかなと考えました。

裁判所の判断は、

(2)ア ところで,雑誌広告は,雑誌上への掲載行為によって初めて実現されるものであり,その広告に対する読者らの信頼は,当該雑誌やその発行者に対する信頼と全く無関係に存在するものではなく,広告媒体業務にも携わる雑誌社及びその広告の仲介・取次をする広告代理店としては,雑誌広告の持つ影響力の大きさに照らし,広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって,読者らに不測の損害を及ぼすことを予見し,又は予見し得た場合には,真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない義務があり,その限りにおいては雑誌広告に対する読者らの信頼を保護する必要があると解され,その義務に違反した場合は不法行為が成立すると解される。

雑誌広告について広告代理店が真実性などを確認する義務について認めています。

雑誌の発行者についても、

オ 被告Aについて検討するに,同被告は本件雑誌を出版しており,その代表者は攻略法の販売を主たる取引とするdの取締役を務めていたこともあったのであるから,被告B以上に,パチンコの機種や性能,パチンコ業界の事情に詳しいのであり,相当数の組合員店舗をかかえるw連合会は平成16年時点で「サクラ・打ち子詐欺勧誘にご注意」との警告ポスターをパチンコ店1店舗当たり2枚を配布し,打ち子名目での勧誘がなされ,詐欺事件が発生していることを客に知らせていたこと(w連合会に対する調査嘱託の結果)を被告Aが知らなかったはずがないし,被告Bの取り次いだ上記(1)カの広告だけでなく,ほかにも同様の攻略法又は打ち子に関する広告を多数掲載していたのであるから,それほど多くの攻略法が同時期に見付かっており,また,打ち子の募集がなされていることについて広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があったといえる。
しかるに,被告Aは,本件各広告又はDらにつき何ら調査も確認もせず,また被告Bをして,調査や確認をさせていないのである。
カ 以上の検討によれば,被告らには過失があると認められる。

と過失を認めています。

これらの文章から使えそうな要素を探すと、「内容の真実性に疑念を抱くべき特別な理由があったといえる」あたりでしょうか。つまり本件被告であるマンション管理会社が印刷配布した文章の内容の真実性に疑念を抱くべきであったことを示せれば、過失の証明ができるのではということです。